2018年11月12日月曜日

最近考えたこと(11月、ダンス、夜道)

たまにふと、外を歩いているときに考える。
今突然私が踊り出したら、何が起こるだろう、と。

少しだけ周りの人がびっくりして、それで見て見ぬ振りして通り過ぎていくだろう。

道端で空き缶か帽子をひっくり返してその後ろで踊っていたら、もの好きな人は足を止めてくれるかもしれない。


深夜、大声で歌いながら歩いている人がいる。
見かけると、なんかにやにやと見てしまう。なんか楽しそうで、こっちも楽しい気持ちになる。
たまに大声すぎてびっくりするような迷惑な人もいるけど、私もついやってしまうから気持ちはわかる。
そして音楽に合わせ、もはや手をひらひらさせている。
あの動きは、自分でも好きな自分の動き。


友達とふざけていて「その動きダンスっぽいね!」という反応。
ダンサーの友達との間では絶対に出てこない話題だけど、あのダンスっぽさってなんなんだろうと思うと面白い。
全ての動作がダンスのように美しく洗練されているように見える人もいる。


ダンスってどこに境界があるのかなと考える。
ふとした動作が、ダンスでない理由は?ダンスに見える理由は?

私はたまに人の前で、踊る。
でもその踊る前も後も、私は動き続けている。


5年前に初演した「譚々」という作品の3度目の上演。

この作品はボレロの構成を下敷きにしていて、
椅子にすわったダンサーとスネアドラムを演奏するパーカッショニストの作品。

ボレロはもはや説明するまでもないが、だんだん演奏楽器が増えて行って音の厚みが増し、クレッシェンドで盛り上がり切ってジャン!と弾けて終わる。

それを2人の人間の音と動きで演る。
テンションと動きをグラデーションで上げていく。これが自分で決めたくせにものすごく難しくて、5年かけてやっと少し形に出来てきたような気がしている。

今回の、自分の動きの構成は
・手先で話す
・脱力することによって体軸から歪む
・力を入れて自発的に動き続けるのでなく、振り子の要領で動きを自動化する
・この3点をグラデーションでつなぐ

明確な動きの振付が決まっているダンスを踊ることももちろん好きだし、そういう作品を作ろうかなと思うこともある。
それでも、自分が見てくれる人に問いたいのは
「何がダンスに見えるか?」という部分で、自分も何がダンス足り得るのか探している部分もある。

何がダンスなのかを考えることは、自分のオリジナルのダンスを作ることでもあると思う。

ダンスっぽい動きは、普段人がする動きより数段巧妙で洗練されていて、関節の可動域や跳躍力の凄さ、スピード感で説得力を出したりする。
例えば、「すごい」という種類の動き。

それよりも、身体がふとした瞬間に人の目を惹き付けるような、誰の身体を以ってしても共感しうるような身体のあり方とその動き。
下ろしている腕をふわっと持ち上げた、ただそれだけのことが人を感動させることができる可能性を持っていると思っている。
腕を持ち上げるなんて、何にもすごくない。すごくないけどそれが人の心を動かすことができるのだとしたらそれはどういうやり方なんだろう。

すごい、という言葉には、私とお客さんとの身体の間に距離がありすぎる。
確かにそれも大事な技術だけれども。


誰がダンスを見るのか。
見るその人の身体はどういうもので、どういう動きを感じ取ってくれるのか。
どんな情報を与えておくべきだろうか。
何を共感してもらえるだろうか。


自分が教えの仕事をするとき、
お客さんの身体の状態をできるだけ自分の身体で想像するようにして指示の言葉を選んでいる。

私は当然身体が柔らかいけれども、少なくとも自分のレッスンに来てくださるような方は自分と同じような身体の状態の人は少ない。

股関節が開かないってどういうことか、
肩に力が入るってどういうことか、
背中がバキバキに凝っているってどういうことか、
肩が上がらないってどういうことか、
筋肉の状態はもちろんだし、気持ちの理由が障害となっていることもある。
それでもその人が十分に運動を楽しむためのきっかけを作らなければならない。

大人数のクラスであるほどより簡潔で、誰の身体にも効果的な一言を投げかける必要がある。
そして大方の場合、身体の形(姿勢)の指示だけでは意味をなさない。

そういうことも自分の技術の一つで、それで私は多くのお金をもらっている。


自分のやっていることにいくらの値段がつくだろう、ということをはっきり意識するべきだと思う。
どうしてお金をもらうのか説明でき、説得できる技術を持つべきだと思う。

社会の中で、自分のやっていることに居場所を与えるために。

誰の何のために踊ってるんだろう、ということを考え続けなければならない。

それが見つけられないならば、音楽を聴きながらリズムに乗って手をひらひらさせている自己満足に過ぎない。
暗い夜道で舞う手のひらを誰が褒めてくれるだろう。

それだってダンスなのに。


中村蓉総合演出「ガイド付き!魅惑のダンス会!」
無事終演しました。
蓉ちゃんを筆頭に、みんな汗を散らして踊りきった。

今回は開場中に回遊式のパフォーマンスをしたり、客席を作品ごとに動かしたり、色々チャレンジした公演だった。
はじめ聞いたときは「まじでいけるのかこれ?」と思ったけれど、蓉ちゃんの執念の構想と素晴らしいスタッフワーク、ダンサーの気概で、まるでテーマパークのようなとても面白い公演になったと思う。

お客さまの、終演後の普段見ることのない笑顔。
「良かったよ~!」て私よりハイテンションな感想。

自分の頑張りだけではこの笑顔は作れなかったと思うと、
こんな面白い公演に関わらせてもらえて、幸せ者だと思った。

だから、
ダンスを踊った人、支えてくださった人、見てくださった人、応援してくださった人、全ての人に、ありがとうございました!


解らないことはたくさんあるけど、

私たちが、もし0から1を創るアーティストを名乗るのであれば、
自分たちの価値ですらも創造しなければならないと思うの。

敵は少ないけれど、味方も少ない時代。
道無き道は風が強すぎる。

なんてな、ささやかながらそんなことを思っています。