2018年4月11日水曜日

プライベートレッスンにて

そのお客様には2ヶ月前くらいに初めてお会いした。

私が担当した初日、
彼女の身体は首から腰まで鉄板が入ったようにガチガチに固まっていて、首の痛みで顔をあげて天井を見ることができなかった。

バレエなどのクラスにも参加していて身体を使うことには慣れていらっしゃるし、スリムな身体つきで一見ダンスやヨガなど得意そうに見えたのだが、
とにかく背中の過緊張からくるつっぱりがお尻や太もも外まで影響を及ぼしていて辛そうだった。呼吸も浅い。
「首固くててターン回りにくくないですか?」と訊くと「確かに」と。


ちなみに過緊張の状態とは、端的にいうと力が入りすぎている状態。
背中の過緊張はともするとすごく姿勢の良い感じに見えるが、間違った姿勢が常に力の入った状態にさせている。背中が一直線でかかと体重。
そして背中の動きに柔軟性がなく、肩首も異常に凝っている。



初回にはとにかく背中のこわばりをほぐすものを行なった。まずは背中が一枚の塊ではなく柔らかく動くものであるということをわかってもらうために部分的に動かすということをして、それまで慣れで使っていた背中をバラバラにすることを目指した。

2、3回目には背中全体と股関節(開きかたに左右差があったので)を重点的に動かし、動かしたらその部分が疲れるということ、また力を抜くということが物理的にどう感じられるのかをいちいち説明しながら行った。

先日の4回目、背中を分割して意識することは最初に比べだいぶできるようになったので、もう一つ胸を開く=肩甲骨を寄せる・脊柱を後屈させる感覚を伝え、さらに呼吸もできるだけ長くとるようにしてもらった。

結果、肋骨まわりの筋肉の緩みによって首の痛みなく簡単に天井を見られるようになったし、首の筋肉の緊張は完全に取りきれてはいないものの触ってみると以前の硬さとは比べ物にならないほど良い状態となり、過緊張が少し緩和されたように見受けられる。


今後はさらに、過緊張にならない身体の使い方、地面からふわっと立ち上がる緩んだ背骨と地面に体重を預ける立ち方まで持って行きたいと思っている。


こんなにスマートに結果が出る方も珍しく毎度テンションが上がってしまうのだが、以前から他の場所で同じような状態の方を担当していることもあり私のやり方もいくらかスマートになっていると思う。



彼女がおっしゃっていた言葉で印象的なものがある。
レッスンが終わって「力を抜く」ということについて話していた際、

「身体の委ね方が初めてわかった」

素敵な言葉だなぁと思った。


特にヨガのレッスンで「力を抜いて〜」という言葉は、本当によく耳にする。
とても抽象的であまり良い言葉ではないと考えているので、「どの部分の重さがどの方向に向かうのか」を具体的に指示することによって単に力を抜いてという表現はなるべく使わないようにしている。

そもそも力が入っている緊張状態に全く気づかない方もすごく多い。
その場合、まず力が入っているということを理解してもらわなければならない。しかし人によっては何十年もそれが当たり前になっているため、身体の常識を変えてもらうのは本当に難しい。
彼女も、自分の身体に力が入りすぎていること自体今まで考えたことすらなかったと。

そして何より、私も、自分の身体の緊張を理解したのはつい最近だ。


身体をなるべく分割していく感覚、分割とはバラバラに動くことができるということ、そのバラバラの身体がどう積み上がっているのか、重さの乗せ方・預け方、そういったことが一つにまとまって「委ねる」という言葉になった。

多分だけど、身体の状態が変われば彼女の性格すらもいくらか変わっていくのではないかと思う。



時間のかかりかたはそれぞれだと思うけれど、絶対に身体を変えられる。
そういうわけでプライベートレッスンはほぼ私の実験場みたいになっている。

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