2018年6月1日金曜日

やる気のはなし

よく行くご飯屋さんでのこと。


その晩はママさんと最近入ったばかりのママさんと同年代の女性がパートで入っていた。
雨が降っていたこともあり早めにお客さんもはけ、ママさんとパートさんも含めて3人で飲んでいた。

なんとなく見た目の若さの話になって、ママさんがパートの方の姿勢が気になると言った。
確かにパートの方は左の腰が落ち右の肩が落ち、右の脇腹が少し潰れた感じに猫背も少し入っている姿勢。頭も前に来ている。

ママさんが
「やっぱり姿勢が一番大事なのよ!〇〇さんそのままだと腰曲がっちゃってどんどん老けて見えちゃうわよ。私も足つぼ月一でやってもらってるけど、やっぱり身体のこと気にするようになったもの。姿勢のことはすごく気をつけてるのよ。」

まくし立てられて「うーん」と唸るパートさん。

「そうだマキちゃんにヨガ習ってみたら?大事なのは経絡とかヨガでもそれで完璧に治すってよりそれがきっかけで体の変化を気にするってのが大事なのよ!〇〇さんは自分の身体のこともっと知った方がいいって絶対!」

マイペースでのんびり屋のパートさんはどこか納得していない感じ。


側からそのやりとりを見ていて、ママさんに加勢して自分のレッスンの営業をかけようかとも思ったけれど、
ただ情報や意見を押し付けられて納得していない人が無理くりトレーニングをしたとて、たかが1、2回“やってみた”で終わってしまうだろう。

ママさんの言っていることは心から同意するけれど、
本人がトレーニングを必要とする「きっかけ」が必要なのであって、どれだけ素晴らしいトレーニングだけあったとて何にもならない…本当に。

だって私自身、今だにヨガのレッスンに続けて行くことができないでいる。
お試しに行ったきりだったり、続かなかったクラスは数しれず。

私は、自分のレッスンに毎週来てくれる方々を心から尊敬している。


結局パートさんは「えーそうなんですかぁ」みたいなことを連発したまま。
全員酒を飲んでいてちょっと酔っ払っていたので、そのままその話はなかったかのように次の話題に流れていった。





女子大生へのヨガの授業でのこと。


4月から新年度が始まって、授業も折り返しに近い。
初回では子鹿のように頼りない足腰だったけれど、だいぶ動きにも慣れてきて様になってきた。


せっかくの大学での授業、普通のフィットネスクラブでヨガをするよりもっと丁寧に、かつ教養として身につけるヨガにしようと思っているので、
ヨガの成り立ちや思想、解剖学や生理学も可能な限り授業の内容に取り入れるようにしている。


その日は自律神経のことに触れようと思っていた。

ただ体育すわりで話をしても絶対右から左に流れて行くだろうと思って、正座で目を瞑って自分の呼吸に集中しながら、という状況で話をしてみようと思った。

不随意に働く自律神経、交感神経と副交感神経、過剰なストレスによる自律神経失調症…

お昼ご飯直後の3限、ヘドバンしてんのかってくらい、さざ波のように揺れる頭の間を私の言葉がすり抜けていく。
「あ゛ー!!」て叫ぼうかと思ったけどやめた。
なんか久しぶりにちょっとイラっとした。きっと、“どうしたら伝わるだろうか”って事前にしっかり考えてちゃんと原稿まで作ってたからだと思う。


大学で授業するからには、なんてかっこいいこと言いながら、
つい自分がフィットネスでお客さんを相手にしているときみたいにしてしまう。
興味を持っていただけるように創意工夫をして、エンターテイメントにしてしまう。
それもそれで大事なんだけど。

なんというか、彼女たちの興味に寄り添うように言葉を選んであげないと届かない、という状況に危機感を感じる。
ダイエットとか、シェイプとか、美容とか、毎回そういう言葉に落とし込んで初めて顔が明るくなる。

分からない知らないことに対する興味の薄さ。
いちいち意味を説明してあげないと繋がっていかない何か。
凪いだ彼女らの水面を、私が手を突っ込んでかき混ぜなければならない。


とはいえもう少し私が大人の魅力で、ミステリアスに話ができたらいいんだけれども。
衝動を掻き立てるような駆け引きが、下手くそなのよ私は。





お手伝いしてる小学生のバレエクラスでのこと。


一番お姉さんのクラスには小2〜小6の子たちが参加している。

いつも真面目で一生懸命練習していた子たちが5人いたのだが中学に上がるタイミングで全員3月に卒業してしまって、そのかげに隠れていたいつもふざけてばかりいる子が小6で一番年長者となった。

彼女はとにかくダラダラしていることが多くて、やりなさいと指示されたことすらヘラヘラして真面目に取り組まない。
決してやる気がないわけではないようなのだが、できなくて不貞腐れている状態や照れ隠しも相まってとにかく素直に取り組んでくれない。


教える側だってちょっとだけ思っている、
「別にプロになるわけでもないし、上手くなる必要だってない。やる気がないなら早くやめたほうがいい。」

他の真面目に取り組もうとしている子たちの手前、先頭で頑張って欲しいところなのだが、そんな自覚や責任を理解してくれるくらい達観してたらこうはなってないだろう。

そうやって思い通りにならない自分と折り合いをつけることがそもそも勉強なのかもしれないけれど。


彼女はどうしたらやる気になるんだろうなぁとレッスンを見ながらいつも考える。
何だろう?好きな男の子にでも見にきてもらったりすればいいのかな。
…そんなバカな。

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