2012年5月27日日曜日

BRUSSEL 3

さて、
明日ブリュッセルを発ち、明後日東京に戻ります。

明日午前中の飛行機なので、なるべく寝ずに今晩は過ごすつもりですが、正直全く自信がありません。この際余裕に余裕重ねて無睡の朝一で空港行くつもりですが…
記憶が鮮明なうちに、日記でも書こうと思います。この一週間のこと書くので、多分長いです。


着いたときは天気最悪だったブリュッセルも、ここ2日くらいすっごく天気も良く、まだ5月なのにすぐ脱いじゃう外国人よろしく薄着でのりのりでした。

本当に、居られるならもっと居てダンスとか演劇とか観たいものはたくさんあるのです…
私の知らない所で面白いこといっぱいあると思うと、無性に悔しい。
この先の告知とか、パンフレットとか観ていると帰りたくなくなる。
かといって無限のインプットはそれはそれで怖くなるのですが… 有限だからこそ意地でも毎日チケット取りに行った感じだけどね。

観光で行くならば、観光地はいつだって私たちを待っていてくれるわけです。
観光地巡るだけなら全部で一週間で十分。
しかし舞台を観るとなると、一日に頑張っても2本しか観られないし、先に面白そうなのがやっていても私がそこで観られないんじゃしょうがないのです。
だから3週間くらい、長い時間が必要だったわけで、かつなるべく同じ都市に留まっていなければやりくりが分からないのです。

街にいる人がどういう生活をしているのか、雰囲気も少しは分かるし、だからこそどういう文化があるのかも多少は分かる気がします。
まぁでもやっぱり、言葉が分からないのは辛いな。

ブリュッセルはやっぱりちょっと怖い街です。別に怖い目にあったわけでもないけれど、バリバリ観光地と、少しでもそこを離れると地下鉄の駅には誰も居なかったり、不気味な路地が多かったり、ギャップが激しい。
人種も様々で、劇場が遠くて中心地から飛ばされるとちょっとしたスラムっぽい所も沢山ありました。多分場所によって住む人が分かれてる。
ついぞ最寄りの駅越えた飾り窓地帯には足を踏み入れず仕舞いでした。


ブリュッセルはそんな感じでしたが、
KUNSTENFESTIVALはかなりやばいです。いい意味で。

が、まぁ今日観たのは正直金返せってくらい酷かったな。笑
学芸会かオイってくらい。
しかも宣告してた時間より長いし、みんなぐったりだったわ。

しかも、このしょぼいダンサーなんなの?!引っ込めー、と思ってたら突如日本語しゃべりだしてさらにがっかり!

バレエカンパニーらしいんだが、誰一人としていいダンサーが居なかったという凄まじさ…
"振付をこなす"ダンサーは大嫌いなの、最近。観てても何も感じない!


酷いのはまぁ置いといて、
他観た4本はかなり興味深いものばかりでした。

Marcelo EvelinとBrice Lerouxのダンス作品は、もはやかつて私が観てきた振付のある"ダンス"というのを越えて、なんというか、"システムに振り付ける"という感じの。
例えば日本人で言えば勅使川原さんの作品を観たときにも感じる、なんて言えばいいんだろー、
振付の一つ一つを身体言語という扱いにするのではなく、動く理由というか、身体の運動そのものに命令に近い形で課せられる振付というもの、拘束する、そう、ルールに近い様なもの。そのルールが振付。
なんのこっちゃ、て感じだけど、動きとしては、Marcelo Evelinのは走ってるだけ、Brice Lerouxのは歩いてるだけなのです。
まぁ言葉にすれば簡単なんですが、どちらもそれを作品にするための方法(演出)がとんでもない。

Marcelo Evelinの作品は、男性7人と女性1人の出演者が全員全裸。
身体の一部(背中や太腿、腕など)にノコギリをガムテで巻いて、頭にはカーニバルちっくな派手な被り物、脚はスニーカーという格好。
それで一時間近く舞台の外周を延々と反時計回りにランニングし続ける。最終的には個々人の揺れてるモノとかどうでもよくなるんだよね。笑
BGMはシューベルトの弦楽五重奏。

苦しそう。でもなんか走ってる。たまにダッシュしたり、動物みたいな動きしたり、手を動かしたりする。
それらを飽きるというより、ぼーっと観てしまう。観ている方に何かを刷り込ませる。猛烈なメタファーであるのはわかるんだけど、何のメタファーなのかは分からないけど、なんか全裸で走ってる人がいるという光景。

最初にこれ観たものだから、空いた口が塞がらなかったわ。
途中で帰る客も居たね。


次に観たBrice Lerouxはさらにシステマチック。
Seth Horvitzという人が製作した全自動グランドピアノが舞台上手前にあって、演奏(当然無人ね)が始まるのですよ。ピアノの上には直径1m位の青白く光る玉が。
そうすると下手奥に、腕と胸から上出した、白い板で出来た正六角錐のドレスみたいなの着た人がゆっくり歩いてるんです。
これがねー憎いもので、床にちゃんと透明のプラスチック板敷き詰めてあって、綺麗に反射するのですよ。まさに水面をアメンボが音もなく移動する感じ。
六角錐の人は音に合わせて、んだか合わせてないんだか分からない感じでゆっくり歩いてて、しばらくすると六角錐の人もう一人出てくるの。
二人でゆらゆらと水面を漂ってると、また一人六角錐の人が出てくる。しばらくしてもう一人、また一人と六角錐の人は増えて、最終的に五人の六角錐の人が付かず離れずお互いに距離感を保ちながら舞台上を滑っている。どうやら小さいタイミングの決まりと歩くルールがあるらしい。

その間にピアノはゆーっくりと、気づかないうちに上手前から下手奥に移動している。終始光る玉のみの照明なので暗い。
最後にはなんか、実際の六角錐と反射した六角錐が合わさって細長い独楽みたいなのが六つ、不思議な空間の中でくるくる回ってる様に観えて大変不思議な感じでしたわ。


長くなってきたけど、あと二つ書くぜ。二時半だ。


三つ目に観たのはKonel Mundruczoの演劇。もとはこの人映像作家らしい。
これは!すごかった。
ノーベル賞作家のJ.M.Coetzeeの"Disgrace"という小説の舞台化。
セットは完璧に家を模した感じ、小道具充実し過ぎ。舞台前方には土の庭が。

あったこと全部説明したい位だけど長いから、特にすごかった所、

冒頭が20分くらい、まじでレイプシーンなんだよね。集団レイプ。突然家に押し居る男たちから始まり、女優の演技というか行われていることがあまりにもリアルで、絶叫から、殴る蹴る暴行も、死んだ犬を入れてた檻に女入れて後ろからヤって、犬の血を浴びせるとか、目を開けてるのが辛い感じ。でいきなり帰る客とか。
いつまでつづくのもうやめてあげて…というとこで急に男たちはサイレンで居なくなるんだけど、部屋に取り残された女のぐったり感、虚脱感凄まじく…
と、いきなり明るい音楽が流れて、レイプしてた男たちもその女も他の出演者もみんな歌い出すのー泣
しかもおもちゃの鉄琴とかトライアングルとかシンセ使って明るく演奏してるし。
やられた…と思った、何をやられたんだかわからんが、とにかくなんかすごいモノを観てしまった感じ。ぽかーんとする。

まぁその後は言葉が分からんかったり(多分ハンガリー語の上演に、フランス語とオランダ語の字幕)したけれど、
超名演技するやる気ない犬が出てきたり、セックスシーンがあったり、舞台のセット全部運び出したと思ったら下が全面土で、そこにバラを植えてったり、土からスモーク出てきたり、犬切り刻んだり、老夫婦のベットシーンがあったり、人間がみんな犬になって吠えまくってたり、いろいろカオスでした。
俳優はみんな演出家の映像に出てる?らしく、たいてい割とマイク使ってたけど、その分セットの緻密さと演技の緻密さが不可分なく適応してました。
舞台の嘘に映画の本当をぶち込んだ感じ。

しかもこの演出家、まだ30代だった気がする、次の作品も観てみたい!、が日本にくる可能性は限りなく低そう…
映像作品探してみようかな。



さて、あと、四つ目に観たのは、
Young Jean Leeという人のパフォーマンス作品。

これは、パンフレットにすでに太った女の人たちの全裸写真(モザイク有)が載ってたので、心して全裸であることに立ち向かえた。

まーやばいね、肉。
超巨乳、というか多分100kgオーバーなんじゃね?て人のバスケットボールのような乳とか。太ってるのに貧乳のボーイッシュなおばさんとか。
みんなぶるっぶるしてる。

タイトルが"UNTITLED FEMINIST SHOW"という、まぁそういう内容ですねって感じ。だけどかなり笑える。しゃべりこそしないんだけど、表情豊かだし、下ネタばりばりで下らないし、黒人が下手くそな歌唄ってるし(ずるい)、なんか開け放っちゃってる感じが非常に清々しい。
楽しそうだし。

ここで始めて、おお、これダンスじゃない、という振付らしきモノを見たけど、全裸だし、完全にギャグになってたのはすごいね。

カーテンコールにはみんなちゃんと服着て出て来たんだけど、それが案外街で見かける普通の女性のスタイルなのですよ、
んじゃここの人たちどんだけ太ってるんだ?と言いたくなるわ。

帰って自分の身体鏡で見たら貧相なこと!笑
さらにこっちで痩せた気がするし…(食べるもの見つけられなくて)


まぁ、そういうかんじ。
なんか全然書き切れてないけど。

そしてあれだよね、面白いのは、結構エログロ系のはお客さんが、舞台の全面横切ってでも途中で帰るんだよね。笑
ブリュッセルのこの企画がいろんな国や地域から色んな作品呼び集めてるのに、当のブリュッセルの人たちが嫌悪感を示すというなんとも攻めの姿勢のフェスティバルでしたわ。笑える。
当然、楽しんでる人の方が多いだろうけどね。


久しぶりに、自分がどっぷり舞台観てはまっている感覚が楽しかった。

言葉で書いたのはほんの一部だけだけど、むしろそれらの感覚を的確に表す言葉が私にはないんだけど、
一つずつの作品が予想不可能で真新しい経験で、
そうだよ、この感覚が面白いんだ、とあらためて思った。


また観に来たいと思うフェスだったなー。




さて三時過ぎたか。

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